帰(けえ)りてえが口癖の経理マンのチラ裏

日常に文章を書く時間をもう少し取り入れwrite思って始めました。

税制改正大綱について~資産課税編1・課税財産の範囲~

1.近況報告

あけましておめでとうございます。


昨年末から三が日にかけて実家に帰省していました。
そこでゆっくりブログ記事の書き溜めでも作ろうかと思っていたのですが、実家の会社の経理作業がかなり難航してこの記事を書いている1月4日現在で何のストックもありません。


税制改正大綱の解説は一日一件ペースでポンポン進めていこうと思っていたのですが、そのスケジュール感に黄色信号が灯っており、現在焦りながらカタカタしています。


ただ経理作業がすんなり進んでも、浮いた時間は可愛い甥っ子に注ぎ込んだでしょうからきっと未来は変わらなかっただろうと思うことにして、さっそく解説を始めましょうか。今日からは資産課税編に突入です。1回目は相続税法の中でも改正の多い項目ですね。相続税・贈与税の納税義務者と課税財産の範囲についてです。


2.課税財産の範囲の変更

2-1.相続税法のキホン

相続税法は1つの税法で2種の税金について定めています。相続税と贈与税です。このことから、1税法2税目と表されたりしますね。


何でこんな構成になっているのかというと、贈与税は相続税を補完するものと考えられ、両社の性質に類似する箇所がたくさんあるからまとめてしまおうということです。


そもそも相続というのは民法の第五編 相続というところに定められています。例えば我々の親に不幸があったとしたら、その親の権利義務という自分とは全く関係のなかったものを継承できるわけですが、その法的根拠となるのがこの部分です。


対して贈与というのは同法第三編 債権の、第二章 契約という所に定められている典型契約です。記載されている場所からも、民法上は類似のものとして扱われているとはとてもいえません。なぜそのような異なる事象に関する課税関係が一つの税法に収められているのでしょう?


相続税というのは民法上の相続や死因贈与、つまり人が亡くなったことに起因して移転する財産について課税しようというものです。これだけだと、じゃあ亡くなる前に移転させること、つまり生前贈与をすれば良くない? という考えが当然に出てきます。取得する財産に担税力を見出して相続に課税する以上、贈与も課税の対象に加えなければ辻褄が合いません。


ただ財産の移転元に着目すると、相続というのは一度しか生じない反面、贈与は何回でも生じる余地がありますよね。1億円の財産の移転でも、相続と贈与とではそれを受けた人や連帯納付義務のある方の経済力等に鑑みた担税力は大きく変わるでしょうから、相続税とは異なる税目として贈与税を定める必要があったのです。


担税力が異なるため税額の計算式は両者の間で大きく異なるのですが、財産の移転についての定めということで共通点も多いので、同じ税法に規定されています。


2-2.改正点

相続と贈与の双方について、財産の移転先と移転元が次の要件を満たす場合に、その移転する財産のうち国外財産については相続税又は贈与税が課されないこととなります。


①移転先(相続人若しくは受遺者又は受贈者):国内に短期に居住する在留資格保有者、国外に居住する外国人等


②移転元(被相続人又は贈与者):相続時又は贈与時に国内に居住する在留資格保有者


書きぶりとしては上述のようになっていますが、法律上の建付けは上記の要件を満たす場合の移転先の個人を居住制限納税義務者又は非居住制限納税義務者(以下「制限納税義務者」といいます)として整理する形をとるのだと思います。


制限納税義務者の課税財産の範囲は国内財産に限定されているため、国外財産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には課税関係は生じません。


現行法で①に掲げるような個人が制限納税義務者となるためには、移転元である個人が一時居住被相続人又は一時居住贈与者といって、在留資格の保有プラスの要件として、相続の場合には日本に住んでいたことがあり、かつ相続の開始前15年以内に住んでいた期間の合計が10年以下であること、贈与の場合には贈与前15年以内に日本に住んでいた期間の合計が10年以下であることが加わっていました。


今回の改正は、上述のプラスの部分の要件が撤廃され、移転元の個人の在留資格の有無のみが判断の材料となる格好です。在留資格を持つ外国人に手厚く対応した形です。


上記でいう在留資格とは、現行の相続税法上の用語と同様に、出入国管理及び難民認定法別表第一の上欄の在留資格をいいます。


一昔前は財産を取得した者が日本に居住していれば有無を言わさず居住無制限納税義務者、即ち全世界課税を強いられたものですが、随分と様変わりしましたね。この区分を間違えると課税関係がガラッと変わってしまいますから、一層の注意が必要ですね。


3.今年の抱負

2021年が明けました。これまで通りのすっきりした年明けとはならず悶々とされている方も多いことでしょうが、いつもと違うからこそ新しい気晴らしを探してみる絶好の機会でもあると思うんですよ。自分を見つめなおすというんですかね。


私の場合はブログでしたけど、それ以外にも色々とやりたいことを見つけてやっていきたいと思います。とりあえずブログについての目標は、100件くらい投稿できたらいいなあと。ニッチな分野について細かく書いているブログですが、たくさんの方に見ていただけたら嬉しいですね。

税制改正大綱について~所得税編4・子育て支援、IDeCo、退職所得、寄附金控除、確定申告義務~

1.仕事納め

今日は仕事納めでした。


これまで続けてきた税制改正大綱の所得税編の解説も、今回をもって終了です。


2.その他の改正点

2-1.子育て助成金の取扱い

国又は地方公共団体が子育てに対する助成として給付する金品は、それを受給する個人において雑所得とすべきものでしたが、非課税となります。適用は令和4年分から。


むしろ今まで課税だったのかと思いますね。支給金額に総所得金額を構成させて所得に応じて取り戻すことによって公平性が担保されるとも考えられますが、単純に回りくどいですからね。行政側としても税負担を逆算して助成額を定めるのは事務手数がかかるでしょうし、シンプルな形に納まったなと思います。


2-2.IDeCo

確定拠出年金法施行令の改正を前提に、DB加入者のIDeCoへの拠出限度額を、1.2万円/月から(5.5万円-DBごとの掛金相当額と企業型DCの掛金額、月額2万円を上限)に変更。適用は令和4年分以後。


個人においては控除額の拡充で歓迎されるものでしょうが、これまで計算基礎になかったDBの掛金相当額と企業型DCの掛金も考慮しなければならないため、人事の事務手数は増えそうですね。


2-3.退職所得

退職所得の計算方法は、退職金から退職所得控除額を控除した残額に1/2を乗じて計算します。ただし、役員等で役員等としての勤続年数が5年以下の者(=特定役員等)が受けた退職金は、最後の1/2を乗じることができないとされています。


今回の改正で、特定役員でない人においても勤続年数が5年以下であれば、その残額のうち300万円を超える部分の金額について1/2を乗じることができないこととなります。適用は令和4年分以後。


使用人で退職所得控除後の金額が300万円超えることも今の日本ではあまりないと思うので、適用シーンは極めて限定的でしょう。


2-4.確定申告義務

居住者は、課税総所得金額等に累進課税税率を乗じて計算した金額が配当控除の額を超える場合に確定申告書を提出する義務があるのですが、改正で控除しきれなかった外国税額控除の額又は控除しきれなかった予納税額がある時は確定申告書の提出を要しないこととされます。適用は令和4年1月1日以後に提出期限が到来する確定申告書から。


確定申告義務の免除でいうと、納付・還付税額いずれも0の場合、消費税とは取扱いが異なりそうですね。消費税は国内における課税資産の譲渡等等がなく、差引税額が0であれば還付の有無を問わずに申告義務を免れるのですが、この改正は納付が0でも還付額も0なら申告義務を課す書きぶりです。


ただ従来の配当控除の額を超える場合という表現をみると、正味の税額が0の場合には申告義務を課さないという考え方に基づいているというのが自然な解釈だと思うんですよね。なぜ還付、即ち正味でいえばマイナスの値を有する必要があるような書き方をしたのかが気になるところです。


それと外国税額控除はその適用要件として確定申告書の提出があるのですが、これも当然に見直しがされるでしょう。


3.今年の締め

所得税関連の改正点で目ぼしいものは一通り書いたので、とりあえず一区切りですね。キリがいいので、これを今年最後の記事にして、しばらく書き溜め期間に入ろうと思います。年明けからまたバンバン更新しますので、しばらく待っててください。


今年も企業経理としていろんな事象を目の当たりにしました。会社から表彰された人に規定以上の現物給与を支給することの是非とか、結構バチバチにやり合いました。


あとはコロナ禍で海外から帰任した使用人に対して支給するホテル代を所得税上でどう取り扱うかも論点に上がりました。コロナという特殊要因はあったものの、事業活動自体は停滞感が強かったので例年ほど会計・税務上の検討はしなかったかもしれません。


来年は良くなっているかといえば、そのような見通しはなかなか持ちづらいです。自身の健康を最優先に、社内の仕事の流れや自身の仕事のやり方についてももっと上手く回せるようにならないか、新たな生活様式への対応に向け引き続き知恵を絞ることを要求される一年になるとみています。みなさんもお大事に。良い年越し、そして来年が良き年でありますよう。

税制改正大綱について~所得税編3・セルフメディケーション税制~

1.日頃の観察・対処って大事

ブラック企業で働いてる人が仕事を苦に自殺したというニュースが流れると、なぜ転職でなくそちらを選んでしまったのかと言う方が一定数いるじゃないですか。それはその話者自身の精神状態のままで勤め先だけが変わった場合を想定しているから、どこか嚙み合わない、現実に即してないんですよね。


私もブラック企業に数カ月いましたけど、あの環境というのは時の経過に比例して精神を蝕むようなものなんです。幸いにも私はそういう精神状態になる前に、こんなところでやってられっかと立つ鳥後を濁しまくって退きましたが、その会社に勤めて長い人を見渡してみると、予備軍というか、そういう末路を辿っても何ら不思議がない人が多かったと、振り返ってみて思います。


精神状態がひどくなってからではこのような選択はとれなかったのでしょうから、日頃から自分をきちんと見つめてあげて、異変があれば都度対処するというのが重要なのだと思います。


こういう綺麗事が理由というわけでもないのですが、保険医療に掛かる前段階での対処を促そうということで、税制面のインセンティブとしていわゆるセルフメディケーション税制が施行されています。今回ご紹介するのは、そもそもの制度の概要と改正点についてです。

2.現行の医療費控除とセルフメディケーション税制

医療費控除というのが恒久法としてあるのですが、セルフメディケーション税制はそれとの選択で適用を受けることができる時限法です。適用期限は令和3年分まで。申告者本人分のみでなく、その医療費等を支出した時点における生計一親族の分を負担していた場合の負担額も対象となります。


2-1.医療費控除

医療費控除は、対象となる支出は保険医療に係る受診料、薬の購入費、交通費等で、確定申告時に明細書の提出と、領収書等を申告期限翌日から5年間保存することを適用要件とし、所得控除額は以下の③ハの金額です。
① 医療費等の額
② イ.総所得金額×5%
  ロ.10万円
  ハ.イとロのいずれか小さい金額
③ イ.①-②ハ
  ロ.200万円
  ハ.イとロのいずれか小さい金額

2-2.セルフメディケーション税制

医療費控除に代えて選択することができるセルフメディケーション税制は、対象となる支出は特定一般用医薬品等購入費で、その申告者自身がその年中に一定の取組(※)を行うことと、一定の手続を適用要件(今回の改正点であるため後述)とし、所得控除額は以下の③ハの金額です。
① 特定一般用医薬品等購入費
② 12,000円
③ イ.①-②
  ロ.88,000円
  ハ.イとロのいずれか小さい金額


医療費控除は支出額が総所得金額の5%相当額と10万円とを低め取りした金額を超えないと適用できず、多くの若い人にとってはハードルが高いのですが、セルフメディケーション税制は1.2万円を超えれば金額要件を満たす点で使いやすい制度となっています。


もう一つの要件である一定の取組というのは、勤め人であれば事業者が労働安全衛生法に基づき実施している健康診断を受けているでしょうから、それで大丈夫です。予防接種やがん検診も入るため、易しい要件ですね。


ただ、生計一親族のための購入費のみを支出した場合においても、取組要件で考慮するのはあくまで申告者本人についてのみなので、自然な感覚で処理してしまうと誤るおそれもある、よく分からない罠があります。


※一定の取組は、厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めることとなっており、現行は下記ページの通りです。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000148850.pdf

3.セルフメディケーション税制の改正点

特定一般用医薬品等購入費の範囲と、書類の整理関係の2点があります。

3-1.特定医薬品等購入費の範囲について

これまではスイッチOTC(over the counter)医薬品といって、医師等の処方を介さずカウンター越しで購入できる医薬品で、医師の処方により入手できる薬と高い代替性を持つものの購入費が対象となっていたのですが、そのうち費用適正化効果が低いものが除外されます。


同時に、スイッチOTC医薬品以外のOTC医薬品のうち費用適正化効果が高いものが対象に加わるとのことです。具体的には3薬効程度、これは日本標準商品分類番号の薬効分類上でいう薬効3種以上を有する薬剤ということだと思います。適用は令和4年分以後。

3-2.取組関係書類の取扱い

セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、確定申告書に一定の取組を行ったことを明らかにする書類の添付が求められていたのですが、これが不要となります。代わりに、申告期限翌日から5年間の保存が義務付けられました。医療費控除における領収書等と同様の取扱いになりました。適用は令和4年1月1日以後に提出する確定申告書から。

4.自分を大事にするために

今年はこんな状況だったのでで家に引きこもることが多く、Youtubeを見る時間がとても増えたのですが、とあるVtuberが家を綺麗にすることは自分を大事にすることに繋がると言っていて、それを聞いて以来掃除が苦ではなくなりました。大掃除も今年は徹底的にやりましょうかね。