帰(けえ)りてえが口癖の経理マンのチラ裏

日常に文章を書く時間をもう少し取り入れwrite思って始めました。

税制改正大綱について~所得税編4・子育て支援、IDeCo、退職所得、寄附金控除、確定申告義務~

1.仕事納め

今日は仕事納めでした。


これまで続けてきた税制改正大綱の所得税編の解説も、今回をもって終了です。


2.その他の改正点

2-1.子育て助成金の取扱い

国又は地方公共団体が子育てに対する助成として給付する金品は、それを受給する個人において雑所得とすべきものでしたが、非課税となります。適用は令和4年分から。


むしろ今まで課税だったのかと思いますね。支給金額に総所得金額を構成させて所得に応じて取り戻すことによって公平性が担保されるとも考えられますが、単純に回りくどいですからね。行政側としても税負担を逆算して助成額を定めるのは事務手数がかかるでしょうし、シンプルな形に納まったなと思います。


2-2.IDeCo

確定拠出年金法施行令の改正を前提に、DB加入者のIDeCoへの拠出限度額を、1.2万円/月から(5.5万円-DBごとの掛金相当額と企業型DCの掛金額、月額2万円を上限)に変更。適用は令和4年分以後。


個人においては控除額の拡充で歓迎されるものでしょうが、これまで計算基礎になかったDBの掛金相当額と企業型DCの掛金も考慮しなければならないため、人事の事務手数は増えそうですね。


2-3.退職所得

退職所得の計算方法は、退職金から退職所得控除額を控除した残額に1/2を乗じて計算します。ただし、役員等で役員等としての勤続年数が5年以下の者(=特定役員等)が受けた退職金は、最後の1/2を乗じることができないとされています。


今回の改正で、特定役員でない人においても勤続年数が5年以下であれば、その残額のうち300万円を超える部分の金額について1/2を乗じることができないこととなります。適用は令和4年分以後。


使用人で退職所得控除後の金額が300万円超えることも今の日本ではあまりないと思うので、適用シーンは極めて限定的でしょう。


2-4.確定申告義務

居住者は、課税総所得金額等に累進課税税率を乗じて計算した金額が配当控除の額を超える場合に確定申告書を提出する義務があるのですが、改正で控除しきれなかった外国税額控除の額又は控除しきれなかった予納税額がある時は確定申告書の提出を要しないこととされます。適用は令和4年1月1日以後に提出期限が到来する確定申告書から。


確定申告義務の免除でいうと、納付・還付税額いずれも0の場合、消費税とは取扱いが異なりそうですね。消費税は国内における課税資産の譲渡等等がなく、差引税額が0であれば還付の有無を問わずに申告義務を免れるのですが、この改正は納付が0でも還付額も0なら申告義務を課す書きぶりです。


ただ従来の配当控除の額を超える場合という表現をみると、正味の税額が0の場合には申告義務を課さないという考え方に基づいているというのが自然な解釈だと思うんですよね。なぜ還付、即ち正味でいえばマイナスの値を有する必要があるような書き方をしたのかが気になるところです。


それと外国税額控除はその適用要件として確定申告書の提出があるのですが、これも当然に見直しがされるでしょう。


3.今年の締め

所得税関連の改正点で目ぼしいものは一通り書いたので、とりあえず一区切りですね。キリがいいので、これを今年最後の記事にして、しばらく書き溜め期間に入ろうと思います。年明けからまたバンバン更新しますので、しばらく待っててください。


今年も企業経理としていろんな事象を目の当たりにしました。会社から表彰された人に規定以上の現物給与を支給することの是非とか、結構バチバチにやり合いました。


あとはコロナ禍で海外から帰任した使用人に対して支給するホテル代を所得税上でどう取り扱うかも論点に上がりました。コロナという特殊要因はあったものの、事業活動自体は停滞感が強かったので例年ほど会計・税務上の検討はしなかったかもしれません。


来年は良くなっているかといえば、そのような見通しはなかなか持ちづらいです。自身の健康を最優先に、社内の仕事の流れや自身の仕事のやり方についてももっと上手く回せるようにならないか、新たな生活様式への対応に向け引き続き知恵を絞ることを要求される一年になるとみています。みなさんもお大事に。良い年越し、そして来年が良き年でありますよう。