帰(けえ)りてえが口癖の経理マンのチラ裏

日常に文章を書く時間をもう少し取り入れwrite思って始めました。

税制改正大綱について~所得税編2・同族会社社債の利子~

1.一人身の気楽さ

私は一人行動が好きなんですよね。


物語シリーズの阿良々木暦くんのように、人間強度を下げるからという
理由で人を遠ざけるほど拗らせてはいないのですが、この身軽さは
一度味わうとなかなか手放しがたい魅力があります。


例えば水族館みたいな所って、足並みを揃えることを目的とした場合には
難関ダンジョンだと思うんですよ。水槽をたくさん回りたい人、
ショーを中心に予定を立てたい人、説明文をじっくり読みたい人などなど。


人が多いほど多様な意見が出ますから、こういうケースでその
すり合わせに時間を要した経験がある方も多いのではないでしょうか。


人が多いほど身軽に動けないというのは、個人だけでなく会社でも同じことなんですね。

2.比較的身軽な同族会社

旅行でいうと、同族会社は一人旅で、それ以外の会社は団体旅行です。


一人旅なので、いつどこにどの程度いて何をするかというのは全部自分らで決められます。
旅行なら何をしようと正解などないのですが、企業活動では話が別です。
税制は、会社というのは利益の最大化を追求する、経済的合理性に
基づいた意思決定をすることを前提としている部分があります。
つまり正解はある程度絞られてしまうのです。


経営と出資者が分離しているような、多くの金融機関、ファンド、
個人が株主となっているような株式会社は、役員が取った又は
取ろうとしている行動について株主からの審判がありますから、
会社の目的に照らして合理的な行動を取らざるをえない事情があります。


一方、同族会社はどうでしょう。経営と出資者が分離されていない
ような、いわば家族経営のような会社は、利益を自分たちに移転させられるかを
重視する場合が多いですし、そうすると必ずしも会社の利益の最大化という
大命題に反する場面も出てきてしまいます。


有り体にいえばずるいことができる余地があるんです。


そこで同族会社というのは税制上様々な対策が講じられていてんですが、
今回の所得税法の改正もその一つです。

3.同族会社の要件

同族会社は一人旅のようなものとざっくり紹介しましたが、一度しっかりとした
要件を確認してみましょう。今回の改正でいうところの同族会社は法人税法に
定める同族会社を指していますので、同法の規定を見てみましょう。


会社の株主等の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。(法法2十、一部削除)


基本的には1親族を1グループとして、上位3グループ合計の持株割合が
50%を超えたら同族会社に該当します。親族というと六親等内の血族と
三親等内の姻族を指すのですが、じゃあ誰を中心とするかが問題になりますね。


中心に据えるのは持株割合順とかではなく、あらゆる株主を
中心として1通りでも同族会社に該当する場合があるならば、
その会社は同族会社ということになります。


ただ条文上の書きぶりから、株式等を有していない人を中心とすることはできません。

4.改正案について

同族会社の説明もしたところで、改正案を見ていきましょう。


①効果:同族会社の社債に係る利子所得を総合課税の対象とする
②対象者:同族会社の判定基礎の株主等と、その特殊関係法人とその親族等
③適用時期:令和3年4月1日以後に支払いを受けるべき利子・償還金


従来は「同族会社の株主等本人」の、いわゆるクーポン利息についてのみが
総合課税の対象とされていたところが、より広く捕捉された形の改正ですね。


対象者には株主の親族等が加わり、対象となる利息には割引債の場合に
発生する償還差益が追加されました。同族会社の判定は上位3グループの
持株割合によるのは上述の通りですが、同族会社の判定基礎の株主等というのは
必ずしも上位3グループに所属する株主等を指すのではありません。


特定の1グループで50%超の場合にはその1グループ、上位2グループを加算してようやく50%超の場合にはその上位2グループに所属している株主等のみが該当します。


利子所得というのは大方15.315%の分離課税が採用されている(措法3、
恒久化しないのかな?)んですけど、これは金融所得課税の一体化という
考えに基づき、金融商品間の税負担に不公平感が出ないようにするためなんですね。


多くの同族会社は非上場企業で、非上場企業からの配当は上場企業と
異なり総合課税です。つまり非上場企業に絞って考えた場合には、
配当と利子とでは金融商品間で差異が生じていたわけです。


差異が生じているということは損得が生じるのと同義ですから、
このような状況下では同族会社は税制を利用する、即ち経済活動を
歪めることに繋がるため、課税の公平性に反するということでの
見直しでしょうかね。分離課税ではなく総合課税の方に寄せたんですね。

5.金融所得課税に見る問題点

上述した通り、金融所得課税は分離課税という固有の税率が用いられ、
給与等の労役に係る所得は累進課税が適用されるので、
どこかしらに損益分岐点が出てくるんですね。


例えば配偶者扶養親族なし、配当所得者は他に総合課税所得なしの
常況と仮定して、保険と税を考慮した総合的な負担を考えると、
800-900万の間、意外と低い位置にあるんです。



その程度で資本家の税負担を超えてしまうのかと思うと……溜息を禁じえません。